大本営発表 ヴァンダンジュの日程決まる!

colum-1

 本日、9月6日午後2時。シャンパーニュ地方におけるヴァンダンジュの日程が発表された。

それによると、ここValle de la Marneはピノノワールとピノムニエが9月15日、シャルドネが9月17日から、となった。

この発表で、シャンパーニュ全体がいっせいに色めき立つ。

 この家でも、知らせが入った途端に、現当主のティエリーと前当主(要はお父さんだけど)のアルマンの表情が一変した。声のトーンが上がり、なんというかエネルギーが注入されたような、同じ話をしていてもどこかうれしそうなのである。
 なにせ、ぶどう農家にとっては1年で最大のイベントである。ヴァンダンジュの成否で今年の収入が決定するのだ。興奮するのも無理はない。

 さっそく、鳩首会談が開かれる。
 議題は、当家ではいつヴァンダンジュを開始するか、である。
 というのも、シャンパーニュ委員会が決定する日時は、フライングが禁止されているだけで、この日以降ならいつ始めても構わないからだ。
 待てば待つほどにぶどうは熟するが、熟しすぎてもぶどうが傷むし、その間に雨でも降られたら品質が落ちる。開始日時の決定は多くのリスクを伴うのだ。
 
 そこで、当然すぐに畑を見に行く。
 両巨頭にくっついて、わたしも畑に向かった。

 今日は、風はさわかだし、太陽の光は透明で、空は青く、雲は白く、畑の緑は鮮やかで、シャンパーニュにいてつくづくよかった、と思える天候である。

 ぱっと見ただけで、ぶどうが先週見たときよりさらに熟しているのが分かった。1週間で1度糖度が上がるといわれているが、ヴァンダンジュ開始まで10日を切って、いままさにぶどうは摘まれんと実をぷくぷくにふくらせている。ヴァンダンジュを待つピノノワール

 収穫時期を決めるために糖度計を使う作り手もいるが、レンヌ家はのやりかたは、ぶどうを口に入れて食べて見るといういたって原始的な手法を採用。わたしも、手当たり次第につまんでみる。
ピノノワール、ピノムニエ、シャルドネのブドウ品種ごと、また畑の区画ごとに微妙に熟し具合が異なり、甘さもすっぱさも違うのがおもしろい。が、シャンパンになるぶどうは、基本的に生で食べてもおいしい。甘い。

「今年はいいミレジムになるぞ」
そう話しながら、ぶどうの出来に二人は満足の様子で戻った。

さ、これから忙しくなるぞ。