感激! 海に落ち込む急斜面のぶどう畑 ディンガッチinクロアチア

 

下を見ると転げ落ちそうな恐怖があるほどの急斜面にブドウ畑が作られていた。

一歩踏み出せばそのまま海に転落しそうなほど。これがクロアチアの最高峰の赤ワインが生まれる畑である。

クロアチアのワイン産地のなかでも最も注目されているのがディンガッチという地区。と、言われたところで、クロアチアワインについての情報はまだまだ不十分だ。そんななか、初めて現地を訪れることができた。

それは、アドリア海の真珠と呼ばれ近年観光客が激増しているドブロブニクの北に連なるペリェシャッツ半島にある。

 

IMG_4919 ディンガッチのブドウ畑は、海岸線まで転げ落ちそうな斜面

 

一方、振り返れば、荒々しい岩の壁がそそり立っている。道などどこにもなく、山羊だけが唯一登れるといわれる、人を寄せ付けない厳しい風景だ。

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この急で荒々しい斜面が、クロアチアきっての赤ワイン品種、プラヴァツ・マリ(Plavac Mali)に適している。

クロアチアのワイン産地は大きく4つに分かれるが、アドリア海に面したダルマチア地方、なかでもペリェシャッツ半島の、そのなかでも、この傾斜地であるディンガッチが最高の区画であり、ブルゴーニュ的に言えばグランクリュの土地柄なのである。

アドリア海はどこまでも青く、波は穏やかで、遠くに近くにたくさんの島影が望める。ときどきフェリーやヨットが通り過ぎる。ぼんやりといつまでも眺めていられる風景を前に、ブドウの樹はたくましく育っている。仕立てはゴブレだが、背がせいぜい膝か腿あたりと低いのが特徴だ。冬はブラと呼ばれる風が強く、それに耐えるためだ。印象としてはコートロティあたりの急斜面だが、背後の岩山が印象的。日本なら屏風岩とでも呼べそうな岩山で、これが海岸線の斜面を孤立させていた。が、トンネルが掘られ、いっきに岩山の境界を越えて、内陸と海岸線が近くなった。もっとも内陸と呼ぶにはあまりに距離が近い。両者は直線距離にすればわずか400mなのだ。

トンネルを抜けると、アドリア海の青い海と空が待っていた
トンネルを抜けると、アドリア海の青い海と空が待っていた

が、この岩山の影響は大きく、日本においてアルプスが日本海側と太平洋の気候をへだてているように、ここでは400mの距離でクリマが異なる。海側は地中海性気候であり、内側は大陸性気候、というわけだ。

実際、内側ではちょうどブドウの開花が終わった状況であったが、これが海側の畑を見るとすでに実ができている。2,3週間の差が生まれているのだ。

テイスティングにおいても、明確に違いは現れていて、内側はフルーティでやわらかい、別の言い方をすれば軽くて飲みやすいワインができあがる。これに対してディンガッチの斜面からは凝縮感のある果実としっかりしたタンニンが得られ、樽熟成をしたものでは長期熟成も可能になる。

 

 

ドブロブニクは美しい。が、高騰と混迷と混乱

ドブロブニクの街を歩き始めて、5分でもう後にしたくなった。

とにかく人が多い。恐ろしいほど多い。いやになるほど多い。P1010188

 

アドリア海の城塞都市としての歴史に思いを馳せるより、いかにフォトジェニックな写真を撮ってSNSにupすることしか考えていない人たちだらけだ。ホテルの料金に驚いていたが、これならむべなるかな。圧倒的に部屋が不足していることだろう。旧市街に部屋を持っていた人は自ら暮らすのをやめ貸すことにしている。ここまで観光客であふれていては暮らしずらいだおうし、貸した方がはるかに稼げる。

わたしが見つけたのもそんな部屋の一つ。まず、受付事務所のようなところに来いと言われる。どうやらオーナーは何か所か部屋を所有しているようで、その管理を一か所でしているというわけ。そこで鍵を受け取り、部屋まで案内される。なぜって住所だけではまずたどりつけないような小道を入り、奥まったところにあったからだ。

屋上のテラスのある建物が泊まったところ。ここの半地下の部分の狭い部屋が貸し出し用。
屋上のテラスのある建物が泊まったところ。ここの半地下の部分の狭い部屋が貸し出し用。

驚いたのは、チェックアウト後に荷物を預かってくれないこと。そして荷物預かりが有効なビジネスとなっていること。そうかもしれない。これだけの旅行者だ。そしてスペースはない。わずかでもスペースを持っていれば、十分なビジネスとなるのだ。ちなみに料金は1時間10クーナ約170円。都内の駐車場並ではないか、スーツケースひとつで。彼曰く、これでも一番安いランクだそうだ。

いちばんの名所である、街をぐるりと取り囲む城壁。これもまた、朝8時の開門前に長蛇の列ができ、入場券を買うにも長蛇の列。当然、歩き始めてもそこここで人の渋滞。

遠目に見ると、聖地への巡礼か、蟻の行列か・・・。

ちなみに、料金も最新版の地球の歩き方が200KNだったがそれより50クーナ値上がり。1年前のガイドブックが150だったから、毎年1000円ずつアップしている。それでもなお、この行列。

10時を過ぎると、街のそこここで人の滞留が起きていて、満足に歩くこともできない。写真で見る限り、いや、実際に見てもたいへん美しい街で、アドリア海の海の色とオレンジの屋根と白い壁、棕櫚の並木と夾竹桃の群生、どこを切り取っても実に絵になる。

要塞都市であったドブロブニク。街は城壁に囲まれており、その上を歩くことができる。アドリア海の海の色と赤い瓦屋根の街並み。素材としては最高なんだけどね。
要塞都市であったドブロブニク。街は城壁に囲まれており、その上を歩くことができる。アドリア海の海の色と赤い瓦屋根の街並み。素材としては最高なんだけどね。

とはいえ、だ。この人混みはうんざり。

もう来ないな。

クロアチアへの旅。準備編その1

次の旅の目的地をクロアチアに決めたのは、ある日届いた冊子がきっかけだ。A4版の薄いパンフレットのようなものだったが、クロアチアのワイン産地と品種について地図と共に詳しく記されていた。
それはワインの輸入業者が作ったのだが、意外にもよく出来ていて、何より日本においてクロアチアのワイン産地についての情報がほとんどなかったのがありがたかった。

近年のわたしの旅先はワイン産地と決めていて、それは仕事でもあるからなのだが、だんだん主だったところは訪れてしまっていた。フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、オーストラリア、ニュージーランド・・・ことにフランスなど頻繁に行ってるから「熱海に行くようなもの」と日ごろ吹聴している。
そこで、東欧に行きたいと考えてた。が、あまりになじみがなくて、いきなりの一人旅は二の足を踏んでいたのだ。
そこへ、クロアチア情報だ。クロアチアは実はアドリア海を挟んでイタリアの対岸にある。イタリアなら詳しいからなんとなくシンパシーがあるし、きっとワインもイタリアに近いものができているのだろう。なんとなく社会主義の匂いも少ない気がした。

というわけで、クロアチア。でも、これがなかなか難題で・・・。