わたしのシャンパーニュでの定点観測地点。
朝7時。外は霧がたちこめ真っ白。気温は4度。真冬か!
しかし、こういう朝は、この後天気が良くなる知らせ。3時間後の写真が次。
気温もぐんぐん上がり22度に。朝は、ダウンを着込み、マフラーや手袋で完全武装していたヴァンダンジュの働き手たちも、いつのまにか、短パン、Tシャツで汗びっしょりになっていた。
この気温差がぶどうの糖度を高め酸を保持し、おいしいシャンパーニュにつながるのである。
シャンパーニュの小さな作り手から届きました。ティエリー・レンヌから立ち上る泡は至福のひと時を…
わたしのシャンパーニュでの定点観測地点。
朝7時。外は霧がたちこめ真っ白。気温は4度。真冬か!
しかし、こういう朝は、この後天気が良くなる知らせ。3時間後の写真が次。
気温もぐんぐん上がり22度に。朝は、ダウンを着込み、マフラーや手袋で完全武装していたヴァンダンジュの働き手たちも、いつのまにか、短パン、Tシャツで汗びっしょりになっていた。
この気温差がぶどうの糖度を高め酸を保持し、おいしいシャンパーニュにつながるのである。
9月に入ってからのシャンパーニュは、うっとりするほどの好天が続いている。朝は冷え込むのだが、そういう日というのは晴れを約束されていて、太陽が昇るにつれぐんぐん気温が上昇する。
空はまさに抜けるような青空で、ぽっかりと白い雲が浮かぶ。見渡す限りのブドウ畑は、緑のじゅうたんを広げたようだ。
湿度が低いから風は爽やかで、ぼんやりと風景を眺めているだけで飽きることがない。
過去2年のフランスは不順な気候で収穫量も少なかったのだが、今年はぶどうが大きく実り、糖度もたっぷり。摘み取ったぶどうを入れるケースがあっという間に満杯になる。
これをすぐにプレスして果汁にするのだが、その仕事をするプレソワーは大量のブドウを前に大忙しだ。
シャンパーニュ・ティエリー・レンヌでは、33人の働き手を雇い、15日から収穫を始めた。
作業は順調で、友人やいとこたちも休暇を取って助っ人に来た。働き手の中にも、毎年やってくる人たちもいる。なかには25年前からとか、親子2世代に渡って、という人も。
朝、昼、晩と大勢で食事をして、わいわいがやがや。
田舎のないわたしには経験がないが、お盆やお祭りのときみたいな気がする。忙しいけれど、みんなどことなくうれしそうなのだ。
そんな雰囲気のおすそ分けに預かって、わたしもヴァンダンジュを楽しんでいる。
今年の夏は寒かった、と誰に会っても言う。7月、8月ともにほとんど毎日のように雨が降り、最低気温が1度(真夏にだ)を記録した日もあった。暖炉に火をくべた、という話も聞いた。もちろんブドウにはあまりよろしくない。
ところが、9月に入り、一転。夏のような日差しが照り付ける日が続いたのだ。
ここで、ちょっと自己PRをすると、わたしはものすごい晴れ女で、今回もちょうど8月末に日本を出発。事前に調べたらあまりに寒そうなので暖かい服をいっぱい持ってきたのにタンクトップとゴムゾウリでよかった。
以後、ただただ好天の毎日。晴れ女の実績がまた増えた。
さて、ヴァンダンジュの日程は、公式に決められる。300近い村のそれぞれで、シャンパーニュを作るのに認められている3種類のブドウ、すなわちシャルドネ、ピノノワール、ピノムニエそれぞれの日時が指定されるのである。
生産者は、これより早く始めてはいけないが、遅くするのは構わない。
シャンパーニュ・ティエリー・レンヌのあるヴァレドラマルヌ地区では、ピノムニエが9月12日より、ピノノワールが9月15日、シャルドネが9月17日からと決まった。そして、レンヌ家では、9月15日月曜をスタートすることに決定したのである。
9月に入ってからの晴天で1週間で糖度が2度も上がったそうだ。あと1週間、この後の天候も晴れが続くと予報されており、さらによく熟したブドウになるはずだ。 8月の寒さのことなどみんな忘れてしまったようで、楽しみなミレジムになるとだれもが顔をほころばせている。
2009年度のシャンパーニュのヴァンダンジュは、最南端のAube地方を皮切りに、ここヴァレ・ド・ラ・マルヌの ティエリー・レンヌでは9月14日よりスタートした。
生産者の言によれば、2009年のぶどうは天候に恵まれ、病害もなく、「トレボンミレジム、ボーレザン(すばらしいヴィンテージ、とてもきれいなぶどうだ)」と絶賛するほどのいいぶどうが収穫できた。
ヴァンダンジュ期間中も毎日好天に恵まれた。朝は深い霧がかかり、とくにマルヌ川の上は真っ白な帯のように重たい霧が立ち込める。これは早朝の気温が冷え込み、水面の温度差によるもので、こういう日は間違いなく絶好の晴天になるのである。
そして、本日9月24日、10日間で延べ350人を動員し、およそ10万キロ(!)のぶどうを収穫した。摘んだぶどうは、その日のうちにすぐにプレスされ、現在はタンクで発酵がすすんでいるところである。
ただし、このあとさまざまな工程を経て瓶詰めされてからもシャンパーニュは壜内2次発酵を行い、そのまま寝かせて熟成の期間を必要とする。とくに ティエリー・レンヌはプレステージシャンパン並みに5~6年の熟成をさせているので、今年のヴィンテージが味わえるのは、まだかなり先のことになりそうである。
本日、9月6日午後2時。シャンパーニュ地方におけるヴァンダンジュの日程が発表された。
それによると、ここValle de la Marneはピノノワールとピノムニエが9月15日、シャルドネが9月17日から、となった。
この発表で、シャンパーニュ全体がいっせいに色めき立つ。
この家でも、知らせが入った途端に、現当主のティエリーと前当主(要はお父さんだけど)のアルマンの表情が一変した。声のトーンが上がり、なんというかエネルギーが注入されたような、同じ話をしていてもどこかうれしそうなのである。
なにせ、ぶどう農家にとっては1年で最大のイベントである。ヴァンダンジュの成否で今年の収入が決定するのだ。興奮するのも無理はない。
さっそく、鳩首会談が開かれる。
議題は、当家ではいつヴァンダンジュを開始するか、である。
というのも、シャンパーニュ委員会が決定する日時は、フライングが禁止されているだけで、この日以降ならいつ始めても構わないからだ。
待てば待つほどにぶどうは熟するが、熟しすぎてもぶどうが傷むし、その間に雨でも降られたら品質が落ちる。開始日時の決定は多くのリスクを伴うのだ。
そこで、当然すぐに畑を見に行く。
両巨頭にくっついて、わたしも畑に向かった。
今日は、風はさわかだし、太陽の光は透明で、空は青く、雲は白く、畑の緑は鮮やかで、シャンパーニュにいてつくづくよかった、と思える天候である。
ぱっと見ただけで、ぶどうが先週見たときよりさらに熟しているのが分かった。1週間で1度糖度が上がるといわれているが、ヴァンダンジュ開始まで10日を切って、いままさにぶどうは摘まれんと実をぷくぷくにふくらせている。ヴァンダンジュを待つピノノワール
収穫時期を決めるために糖度計を使う作り手もいるが、レンヌ家はのやりかたは、ぶどうを口に入れて食べて見るといういたって原始的な手法を採用。わたしも、手当たり次第につまんでみる。
ピノノワール、ピノムニエ、シャルドネのブドウ品種ごと、また畑の区画ごとに微妙に熟し具合が異なり、甘さもすっぱさも違うのがおもしろい。が、シャンパンになるぶどうは、基本的に生で食べてもおいしい。甘い。
「今年はいいミレジムになるぞ」
そう話しながら、ぶどうの出来に二人は満足の様子で戻った。
さ、これから忙しくなるぞ。